バンコクでタイ企業の株主総会に参加してきた。
会社はバンコク銀行(Bangkok Bank Plc)。同国を代表する大手金融機関になる。
全部タイ語で進行するため内容は全く分からなかったが、雰囲気は楽しめた。ちゃんとお土産も貰えている。
ちなみに外国企業の株主総会参加は昨年のマレーシアに続いて2回目。
海外企業の株主総会に参加するには?
まずはじめに海外企業の株主総会へ参加する方法について簡単に説明。
一般的には日本と同じように企業の株を保有して権利確定日を迎えれば総会への参加権利が得られる。
ただ、日本の証券会社で海外の株を買う際は個人が直接株を保有する形にはならず、証券の保管代理業務を行う現地金融機関(カストディアン)が株を保有する形になるため議決権は得られない。
今回のケースではタイ現地の証券会社に口座を開くことでこれを回避している。
議決権が得られるタイ株の種類
さらにややこしいのだが、タイでは外国人の出資制限があるため、外国人向けに流通している株は①流動性は高いが議決権が得られないNVDR(預託証券)と②議決権は得られるが流動性が極端に低いF株(フォーリン株)の2種類に分かれて管理されている。
種別 | 名称 | 議決権 | 配当 | 流通量 |
---|---|---|---|---|
NVDR | 預託証券 | ✕ | ◯ | 多い |
F株 | フォーリン株 | ◯ | ◯ | 極小 |
タイ株投資ではNVDRでの取引が一般的なのだが、今回は株主総会へ参加するためにわざわざF株を買っている。
株主総会開催日を確認して計画を立てる
バンコク銀行の権利確定のタイミングは9月中旬と4月下旬。株主総会は毎年タイの正月ソンクラーン前の4月12日(土日の場合は前営業日)に行われている。
■バンコク銀行の過去総会開催日
- 2019年4月12日(金)
- 2018年4月12日(木)
- 2017年4月12日(水)
- 2016年4月12日(火)
- 2015年4月10日(金)
今回はこの日を含んだ5日の連続休暇を取得して渡航計画を立てた。
ソンクラーンにも参加出来るのでちょうど良いタイミング。
タイ企業の株主総会参加レポ
計画を立ててから株主総会参加までをレポート。
事前に日本の住所宛に株主総会案内が届く
F株を購入して議決権を得ると株主総会開催1ヶ月前ぐらいに日本の住所宛に総会案内が届く。
株主管理用のバーコードが付いた登録用紙も同封されているので当日はこの書類を提出する。
会場のバンコク銀行本店へ
株主総会の会場はバンコク銀行本店。場所はシーロム通り。
■バンコク銀行本店所在地
開始は15時なので宿でゆっくりしてから出発。
最寄り駅のBTS Sala Daeng駅からは徒歩5分程の距離。
株主総会の開催場所へ
建物に入ると1階は一般カウンターとなっている。
本店ということでかなり広い。
株主総会の会場は本店の上層階にあるホール。
エレベーターに乗り受付フロアへと向かう。
受付手続き
エレベーターを降りフロアに入る前にセキュリティチェック。荷物の中身も確認する徹底さ。
会場内はめちゃくちゃ人がいる。高齢者ばかりなのは日本と同じ。
平日なので当たり前か。
そして受付カウンターにて事前に送付された案内用紙と本人確認資料を提示する。
外国人なので今回はパスポートを提示。
外国人が訪れることはあまりないらしく、受付係のお姉さんが若干困り気味だった。(スミマセン・・)
上司らしき人に確認してもらって受付は無事完了。
議決権行使書と参加者シールをその場でもらう。
議決権行使書は議案ごとに賛成/反対/保留にチェックしてサインをする形式。当たり前だが全部タイ語。
そして次はお目当てのお土産。
列が出来ていたので並んで貰う。
海外でも株主総会の土産文化は普通にあるようだ。
中身は後で確認。
待機場所へ
お土産を貰ったら待機場所へ移動する。
席について中身チェック。
謎の本と菓子パンセットと手提げ袋だった。
菓子パンは翌日の朝ごはんとして頂いたが、本は邪魔になるので破棄。
豪華なお土産という訳ではないが貰えるだけありがたい。
そしてそのまま開始時間まで待機。
実は場所が違った・・
待機場所にはスクリーンやらマイクやらが設置されているので、てっきりここで株主総会が行われるのかと思ったが、会場は別の場所だった。
待機場所は自由にくっちゃべりながらモニター越しに総会の進行を見ることが出来る遠隔会場であった。
本会場は1つ上の階ということで急いで向かう。
中はかなり大きなホールになっており、既に議長の挨拶が始まっていた。
本店ビルの上層階にこんな立派な施設があるとは、さすが最大手の銀行。
議事進行
株主総会の進行は日本と同じで事業報告から始まり株主の質問タイムと議案採決へと進む。
当たり前だが全部タイ語なので何を言っているのか全く分からない。雰囲気だけ。
質問タイムでは日本と同じで次のパターンの質問者が現れる。
■質問者のパターン(世界共通?)
- まともな質問をする人
- 面白質問・おちゃらけ質問をする人
- しょうもない質問をする人(繰り返す人)
マレーシアでも各パターンの質問者が出現したので世界共通なのかもしれない。
途中英語で質問をしだす謎株主(上記パターン3に該当)が現れたが、取締役会メンバーはタイ最高学府のチュラロンコーン大学&米国IVYリーグのMBA出ばかりなので難なく質問を英語で返す。
さすが!
また、先程の待機会場とは中継で繋がっており、そこからの質問も受け付けていた。
議案採決
質問が出終わると採決へ。
ここでは拍手での賛同とかはなく事前の投票結果を表示して一旦は終わり。
手元にある議決権行使書は帰りにスタッフへ提出するというシステム。
議案内容は分からないが、せっかくなのでグーグル翻訳でYes or Noを確認して投票。
写真を撮ったら書いてある文字を画面上で翻訳してくれるという非常に便利なアプリ。
株主総会が始まったのは15時だが全てが終わって会場を出たのは17時半。
結構長かった。
各国の株主総会を比較
今回タイ企業の株主総会に参加してみて各国で若干の違いがあったので紹介したい。
提出書類 | 提示物 | 参加者確認 | 言語 | 議決権行使 | お土産 | |
---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 議決権行使書 | なし | 出席票 | 母国語 | 行使書提出 | あり |
タイ | 登録用紙 | 国民IDカード | シール | 母国語 | 行使書提出 | あり |
マレーシア | なし | 国民IDカード | リストバンド | 英語 | 電子投票 | あり |
上記の中ではマレーシアが先進的だと感じた。
※自分が参加した企業の範囲内の違い。全企業が同じという訳ではないです。
違い①:株主総会の参加手続き
株主総会に参加するには会場で種類を提出して株主である旨を証明しなければならない。
日本では事前に届いた議決権行使書を提出するだけで参加できるが、タイではRegistration Form(登録フォーム)または受任者の場合はProxy Form(代理者フォーム)を提出し、身分証明として日本のマイナンバーカードに相当する国民IDカードを提示する必要がある。外国人の場合はパスポート。
一方マレーシアではこのような書類の提出は不要。直接会場に出向いて国民IDカードを提示するだけで良い。外国人も同じで会場でパスポートを提示するだけ。
この点に関しては議決権行使書さえ持っていれば、その人が誰であろうとそのまま入場できる日本と違い、身分証明書の提示が必ず求められる海外は本人確認が徹底されていると感じた。
違い②:出席者確認と出席者の識別
次に手続き完了後に出席者であることを示すために渡される物の違い。
日本の場合は何かしらの出席票でタイではシールだった。どちらも作りは簡易的なもので出席者が誰であろうと特に違いは無い。
一方マレーシアでは渡されるのはリストバンドだが、出席者が株主か代理者かを色や表記で明確に分けていた。
株主はShare holderで代理はProxy。
前回訪れたマレーシア企業のケースではカストディアン口座で保有している銘柄であったため、上記のようなProxy表記のリストバンドが渡された。
議決権行使時に参加者種別毎に手続きが別れていたので後続処理が関係しているようだ。
違い③:当日参加者の議決権行使方法
次は当日参加者の議決権行使方法について。
日本では出席時に議決権行使書を提出し、タイでは受付で渡された行使書を株主総会終了後に提出する。
一方マレーシアは結構進んでおり、ある企業では手続き時に受け取る電子デバイスを使ってその場で投票をしたり、あるいは別企業では総会終了後に別室に設けられたブースでオンライン投票を行ったりしていた。
結構画期的。
マレーシアでは株式関連書類の電子送付も認められているのでかなり先進的な取り組みをしている。
違い④:言語
株主総会の進行は日本であれば日本語、タイであればタイ語と基本母国語で行われるのだが、マレーシアでは株主質問も含めて全て英語で行われていた。
外国人である自分としては英語であれば内容も理解できるので有り難い。
マレーシアでは英語が公用語となっている訳ではないのだが、多民族国家であるため共通語としての英語が広く使われている。恐らくこれが理由。
いずれにしろお隣さんと中国語でお喋りしていたおじいちゃん&おばあちゃん達が、質問タイムになると流暢な英語でやりとりを始めたのにはかなり驚いた。
ザ・グローバル人材。
同じ点:株主総会のお土産
最後は共通部分。
株主総会の参加者向けにお土産を渡すという文化はタイにもマレーシアにもあった。
日本では廃止の傾向にあるが海外ではまだまだ健在。
また日本でも一部企業が行っている場合もあるが、株主向けに食事が振る舞われるケースもあった。
一方株主優待の文化は海外には無かったが、お土産で貰ったクーポンを使い自社が運営する飲食店で株主優待っぽく使うことは出来た。
いろいろ文化の違いを知ることが出来て非常に良い経験だった。
参考までにマレーシア企業の株主総会参加レポは下記です。
◯マレーシアで株主総会に参加
気になる方は読んでみてください。
【余談】翌日はソンクラーンに参戦!
余談だが、バンコク銀行の株主総会階開催日の翌日からはタイの旧正月ソンクラーンが始まる。
この期間は街中で水を掛け合う習慣があり、バンコク銀行本店前のシーロム通りでは水鉄砲を持った人達が大勢集まって夜までどんちゃん騒ぎをしていた。
季節的に暑い時期なので水をかけられても涼しくて丁度よい。
かなり楽しいイベントだったのでまた別の機会に紹介したいと思う。
今回は株主総会への参加がメインだったが、ソンクラーンにも参加出来て非常に満足な旅行であった。
以上です。
コメント
すごく参考になりました。
もっといろいろな国、いろいろな会社の株主総会について聞いてみたいです。
なかなか難しいとは思いますが。
ありがとうございます。個人的にはいろいろ参加してみたいのですがなんせ会社員なので時間がなく・・。