CRS制度が開始!海外金融口座にもマイナンバー情報がひも付きます

CRSという海外金融口座の情報交換制度が始まっている。

制度開始に伴い、海外で開設している金融口座であっても今後はマイナンバーの提供が求められる。

今回取引をしている海外の証券会社より、早速情報の提供依頼があった。

ぜひご紹介したい。

CRSとは?

CRSとはOECDが策定を行ったCommon Reporting Standard(共通報告基準)の略称のことで、国際的な脱税や租税回避への対処を目的に各国の非居住者が保有する金融口座情報を参加国間で効率的に共有できるようにした制度となる。

具体的には口座所有者の氏名、住所、納税者番号、口座入出金記録などの情報が各国の税務当局間で共有される。

ここでいう納税者番号とは日本であればマイナンバーのこと。

2017年より運用開始となり日本も参加している。

CRSの参加国は?

CRSの参加国は現時点で100カ国以上。既に2017年より49カ国で情報交換が始まっているが、日本を含めた53カ国は2018年からの実施になる。

CRS参加国・地域の一覧はOECDホームページの案内によると次のとおり。

■2017年情報交換開始
CRS参加国・地域
アンギラ イタリア
アルゼンチン ジャージー
ベルギー 韓国
バーミューダ ラトビア
イギリス領バージン諸島 リヒテンシュタイン
ブルガリア リトアニア
ケイマン諸島 ルクセンブルク
コロンビア マルタ
クロアチア メキシコ
キプロス モントセラト
チェコ共和国 オランダ
デンマーク ノルウェー
エストニア ポーランド
フェロー諸島 ポルトガル
フィンランド ルーマニア
フランス サンマリノ
ドイツ セイシェル
ジブラルタル スロバキア共和国
ギリシャ スロベニア
ガーンジー島 南アフリカ
ハンガリー スペイン
アイスランド スウェーデン
インド タークス・カイコス諸島
アイルランド イギリス
マン島  –

途上国から先進国まで幅広い国が制度に参加している。

またタックスヘイブンと言われている英領バージン諸島やケイマン諸島も参加国(地域)に含まれているのに注目したい。

■2018年情報交換開始
CRS参加国・地域
アンドラ レバノン
アンティグア・バーブーダ マカオ(中国)
アルバ マレーシア
オーストラリア マーシャル諸島
オーストリア モーリシャス
アゼルバイジャン モナコ
バハマ ナウル
バーレーン ニュージーランド
バルバドス ニウエ
ベリーズ パキスタン
ブラジル パナマ
ブルネイ カタール
カナダ ロシア
チリ セントクリストファー・ネイビス
中国 セントルシア
クック諸島 セントビンセント・グレナディーン
コスタリカ サモア
キュラソー サウジアラビア
ドミニカ シンガポール
ガーナ シントマールテン島
グリーンランド スイス
グレナダ トリニダード・トバゴ
香港(中国) トルコ
インドネシア アラブ首長国連邦
イスラエル ウルグアイ
日本 バヌアツ
クウェート – 

伝統的に銀行の守秘義務が強力なことで有名なスイスも、2018年度の情報交換対象国になっている。

そしてタックスヘイブンのパナマも含まれている。

■2019,20年情報交換開始
CRS参加国・地域
アルバニア(2020)
モルディブ(2020)
ナイジェリア(2019)

残りの国は順次交換開始といったイメージ。

■情報交換開始時期未定
CRS参加国・地域
アルメニア ハイチ
ベニン ジャマイカ
ボツワナ カザフスタン
ブルキナファソ ケニア
カンボジア レソト
カメルーン リベリア
チャド マダカスカル
コートジボワール モーリタニア
ジブチ モルドバ
ドミニカ共和国 モロッコ
エクアドル ニジェール
エジプト パプアニューギニア
エルサルバドル パラグアイ
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 ペルー
ガボン フィリピン
ジョージア ルワンダ
グアテマラ セネガル
ガイアナ  –

時期未定という国もあるが、主要国はCRSへの参加を表明している。

CRSに参加しないアメリカ

現時点でCRSへ参加表明をしていない国にアメリカがある。

アメリカはCRS開始以前にFATCAという法律を整備し、既に世界中で運用しているというのが主な理由。

FATCAは米国人(居住地問わず)の海外金融口座情報を把握するため、各国金融機関に対して税務関連情報の聞き取りと米国税務当局への情報提供を要請するというもの。

FATCAへ協力有無は国と金融機関ごとに異なるが、協力をしない場合は米国源泉の配当や利息などに30%の源泉徴収を課すという強気な姿勢をとっている。

このように既に自国で制度を整えているアメリカにとってCRSは不要となるため、現時点で参加をしていない。

ちなみにアメリカ様の言うことなので、日本の金融機関はもちろんFATCAに協力をしている。

■FATCA聞き取り

上記は日本のある銀行のFATCA聞き取りフォーム。

もし申込者が米国人である場合は、Form W-9という米国の納税者番号を報告する書面を記入する必要がある。

■米国納税者情報提供依頼書(フォームW-9)

外国の金融機関に対して無駄な負担を強いることができるのは、強国アメリカだからこそなせる技。

海外金融機関へマイナンバー情報を提供する

CRSの開始にともない、制度参加国の金融機関は情報の聞き取りを既に開始している。

例えばオフショア口座として人気(?)のHSBC香港では、新規口座開設時にマイナンバー情報の入力が必須になっているとのこと。

また既に開設済の海外金融口座であっても、今後後追いで情報の提供が求められる。自分の場合はマレーシアに開設している証券会社Rakuten Tradeより情報の提供依頼があった。

手続きはwebで申告するので難しいものではない。

実際の画面はこんな感じ。

■CRSに関する情報提供依頼

アプリ立ち上げ時に上記のようにCRSに関する情報提供依頼が表示される。

■CRS情報入力

ログイン後に居住者 or 非居住者の申告画面が表示される。

■国選択とマイナンバー入力

非居住者を選択すると国の選択欄が出てくるので日本を設定。またTIN(Taxpayer Identification Number)という納税者番号の入力欄にはマイナンバーを入力する。

これで完了。

今回は1社からの依頼のみであったが、今後マレーシアの残りの金融機関とタイの金融機関からも報告が求められるはず。

CRSは問題ではない。あとは行政がしっかり仕事をするかどうか

日本の制度においては、海外の金融口座で得た利息や収益であっても口座名義人の居住地が日本であるのなら日本へ納税をする必要がある。

日本の税制に関しては、某国税庁長官のふざけた答弁にあったような役人による税金の雑管理とか、政府がしれっと加える森林環境税や出国税などの謎の新税とか、いろいろ不満を持つ人は多いと思うが、それでもルールが決まっている以上はそれに従って納税する必要がある。

今回のCRSの件についても、マイナンバーよって個人の情報が国に管理されるというのはあまり良い気はしないだろうが、特にやましいこともなく、納税ルールを守っているのであれば全くの無害。逆に今まで不正をしていた者をあぶり出す良い制度になる。

一個人としてはCRSは特段問題ではないので、あとは国がちゃんと仕事をするかどうかだと考えている。

これを期に不正を減らすのはもちろんのこと、マイナンバー制度も含めて新たな運用が始まったことで、どの程度行政の無駄が減ったのか国にはちゃんと示してもらいたいと思う。

以上です。

コメント

  1. intecontipapa より:

    米国のIB証券とベトナムのSSI証券の口座開設に成功しましたが、その時はまだマイナンバー聞かれてないですね(上記だとCRSに入っていないため?)。ちなみに両社とも取引に必要な必要証拠金がバカに高いのですが、CIMBマレーシアやタイもそのような縛りはあるのでしょうか?

    • mdish より:

      米国とベトナムは不参加国のようです。IBのデポジットは高いのは知っていましたがベトナムもですか?

      CIMB単体ではマレーシアもタイも証拠金は無いですが、別途MM2Hビザ保有の期間はビザデポジットとして定期預金が必要になっています。

  2. intecontipapa より:

    情報ありがとうございます。やはりMM2Hの定期預金がデポジット代わりなんですね。再度SSIの規定を読む限りは特に明記されていないですが、色々な日本人のブログでは40万から100万円のデポジットが必要と情報が錯綜していますね。現在現地担当に確認中です。

  3. hiroko より:

    PDFにてCRSが届きました。

    TIN欄は日本のマイナンバー番号でよかったのですね?
    参考になりました!

  4. mdish より:

    はい。マイナンバーがTINに該当します。お役に立てて光栄です。